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平らな宅盤だけでは見えなかったもの|建築の足が立つ場所から考えた「光善寺の家」

 

 

 

平らな宅盤だけでは見えなかったもの
〜「建築の足が立つ場所」から考えた光善寺の家〜

前回の記事では、斜面地を前にしたとき、建築家が最初に考えることについて書きました。

それは、どこに家を建てるかということではなく、
「どこに建築の足が立つのか」
を探すことです。

土地には、それぞれに持っている高さや向き、時間の流れがあります。
その土地が持つ特徴を読み取りながら、建築が無理なくそこに存在できる場所を探していく。

今回は、その考え方を実際の住宅設計を通して紹介します。

「光善寺の家」は、一見すると斜面地ではありませんでした。

なぜなら、すでに住宅を建てるための平らな宅盤が造成されていたからです。

 

違和感|平らなのに、何かが足りない

 

敷地を見ると、そこにはきれいに整えられた住宅用の平らな場所がありました。

一般的に考えれば、その宅盤の上に建物を配置すれば住宅として成立します。

道路からのアクセスも確保できる。
建物の配置も考えやすい。
造成された場所なので施工もしやすい。

住宅として考えるなら、それは間違った答えではありません。

しかし、現地に立ったとき、私は少し違和感を感じました。

それは、背後に残された斜面の存在でした。

宅盤だけを見ると、その土地は平らな土地に見えます。

でも、その場所は本来、10m以上の高低差を持つ地形の中にあります。

造成によって建築を建てやすい状態にはなっているけれど、土地が持っていた高さの関係まで消えたわけではありません。

むしろ、その残された斜面こそが、この土地が持っている大きな特徴だと感じました。

 

 

 

土地を読む|宅盤だけを見ると土地の半分しか見えていない

 

住宅設計では、敷地の中で建物を建てられる場所を探すことから始まります。

ただ、建築家が見る土地は、単純な「建築可能範囲」だけではありません。

そこにある高低差。
周囲との関係。
光の入り方。
風の流れ。
そして、その場所に立ったときに感じる身体的な感覚。

それらを含めて土地を読みます。

光善寺の家の場合、平らな宅盤だけを敷地として考えることもできました。

しかし、それでは道路から宅盤までの関係と、宅盤から斜面へ続く関係が切れてしまいます。

道路から見た高さ。
暮らしが始まる高さ。
自然へつながる高さ。

本来、この土地には異なる高さのつながりがありました。

その関係を無視して平らな場所だけに建築を置くと、土地を単なる「建物を置く台」として扱ってしまうように感じました。

土地には、建築が利用するために整えられた部分だけではなく、残された部分にも意味があります。

その土地らしさは、むしろ建築しにくい場所に残っていることがあります。

 

 

 

一般解|平らな宅盤に建てるという考え方

 

もちろん、平らな宅盤に建物を配置することには多くのメリットがあります。

基礎計画がシンプルになる。
施工性が良くなる。
コストも整理しやすい。

住宅をつくる上では、とても合理的な考え方です。

実際、多くの住宅ではそのようにつくられています。

しかし、合理性だけで土地を見ると、その場所でしかできない暮らし方を見落としてしまうことがあります。

建築は、ただ安全に建つだけではなく、その土地に建つ理由を持つことも大切だと考えています。

光善寺の家で考えたかったことは、

「どうすれば斜面を利用できるか」

ではありませんでした。

「この土地が持っている高さの変化を、どう暮らしにつなげるか」

ということでした。

 

別の答え|土地と建築をもう一度つなぐ

 

そこで考えたのは、建物を宅盤の上へきれいに納めることではありませんでした。

もしそれだけを考えれば、この家は十分成立します。
しかし私には、建築だけが平らな場所に取り残されてしまうように感じられました。

土地は宅盤だけで終わっているわけではありません。
道路から始まり、その先に宅盤があり、さらに斜面へと続いています。

その関係を建築が途中で断ち切ってしまうのではなく、もう一度つなぎ直すことができないだろうか。

そう考えた結果、玄関は少し低い位置へ。
道路から宅盤へは階段ではなく、ゆっくりと上がるスロープを選びました。

設計の目的は高低差を解決することではありません。
土地が本来持っていた連続性を、暮らしの中へ戻すことでした。

 

 

 

三つの高さ|一つの地形として暮らす

 

完成した家には、道路・宅盤・斜面という三つの高さがあります。

けれど、暮らしの中ではそれらを別々に意識することはありません。

家へ帰り、玄関をくぐり、リビングへ向かい、窓の向こうの緑へ視線が伸びていく。

その流れの中で、身体は少しずつ高さを変えながら土地を歩いています。

高さは解決されたのではなく、暮らしの一部になりました。

住宅の断面は、単なる床の段差ではありません。
土地が持つ時間や重力を、そのまま建築へ受け渡すための設計でもあります。

だからこの家は、平らな宅盤の上に建つ住宅というより、一つの地形の中で暮らす住宅になったのだと思います。

 

 

まとめ|建築は土地の続きをつくる

 

造成された宅盤は、建築を建てるためにつくられた場所です。

けれど、その土地の物語は宅盤から始まるわけではありません。

道路があり、斜面があり、その間に今の宅盤があります。

建築は、その関係を受け止めながら形になっていきます。

だから私は、土地を見るとき、平らな場所だけを見ません。

建物が建つ場所だけではなく、その土地がどこから始まり、どこへ続いているのかを考えます。

前回の記事では、「建築の足が立つ場所」という考え方を書きました。

今回の光善寺の家は、その考え方を形にした一つの答えです。

建築は土地の上に置かれるものではありません。

建築は、その土地の続きをつくるものだと考えています。

 

コンテナデザイン きしもとたかのぶ

 


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